中欧旅行、最終日の事件。
ブダペストでのこと。
泊まっていたのはアパートタイプで、いわゆる受付とかはない。
担当のおばちゃんが、アタシたちが到着するまで待っててくれて、その場でチェックイン(?)して精算。
チェックアウト(?)時に、鍵を受け取りために再度登場する、という形。
そのチェックイン時に、あれこれ世間話(「私はTOYOTA車に乗ってるのよ、TOYOTA車ってサイコーね!」とか)。
そして、最終日のフライト時間から逆算して、チェックアウト時間を決定。
ついでに、空港までのタクシーの予約もしてもらった。
宿泊した部屋のある建物
正面が建物への入り口
ここの2階(日本でいう3階)が自分たちの部屋
さて、最終日。
おばちゃんが鍵を取りにくるのは、朝の6時40分。
タクシーの予約もその時間。
それに合わせて早起きして、帰国のための荷物整理。
約束の6時40分。
おばちゃん、来ない。
まあ、5分や10分、遅れることもあるか。
ハンガリアン、時間にルーズなのかも知れない。
6時50分。
おばちゃん、来ない。
不安。
7時。
約束の時間から20分。
やばい。
ヒコーキの時間は10時。
ということは8時にはチェックインしたい。
ここから空港までは「一応1時間みておけば大丈夫」と言っていた。
ということは、そろそろ出ないと…。
もしかしたら、日にちを間違えて寝てるかも?
それとも、夜の6時40分と間違えてる?
とにかく、ここにメモしてある携帯電話番号へ電話しないと!
幸いアパートの目の前に公衆電話。
コインを入れて番号をプッシュ(コインがあってよかった!)。
…なんか、4つ目の番号をプッシュしたところで、音声が流れる。
たぶんハンガリー語。
全然分かんない。
ここから携帯電話には、かけられないんだろうか?
あぁあああ! どうすれば!
ヒコーキが!
どうすればいいか分からず、とにかく目の前で開店準備をしているマクドナルドへ飛び込む。
「ヘルプミー! アタシはこの番号へ電話をかけたい!」と叫び、メモを指さす。
店の電話を貸してくれるか、それか誰か、携帯電話を貸してくれ!
すると店員さん、「このあたまの0036は、06だけでOKよ。それでそこの公衆電話からかければOK」と。
あーん、電話貸してくれなかった!
すぐに公衆電話に戻り、言われた通りに06から番号をプッシュ。
すると、「40フォリント以上入れてください」の表示が(入れたのは10フォリント硬貨1枚)。
財布を漁って、50フォリント硬貨を見つけて投入。
再度、番号をプッシュ。
ルルルルー
つながった!
ガチャ
「This is Yugo! あの、あの、もう7時なんですけど!」
「そうね」
「そうね、じゃなくて! 早く来てよ!」
「ええ、行くわよ」
「(なんでそんなに落ち着いてる?)は、は、は、早く!」
「ええ」
ガチャン
7時15分。
約束の時間から30分以上経過。
やばいやばいやばい。
なんでちっとも来ないんだろう?
さっきの電話、ほんとにおばちゃんにつながったんだろうか?
もしかしたら、全然違う人に間違ってつながって、適当に返事されただけかも知れない。
ど、ど、どうしよう。
あと、予約したはずのタクシーも姿がない。
いったいどうなってるんだ?
そこへアタシと同じ歳くらいの男性が通りがかった。
この人なら携帯電話を持ってそう。
貸してくれ! 頼む!
「エクスキューズミー、この番号に電話をしたいんだけど、モバイルフォンを貸してくれない?」
「(困惑顔)」
「お願い! すごく困ってるの!」
「ここの公衆電話を使えばいいじゃん」
「ええと、どうやってかければいい?」
「まずコインを入れて。この番号は携帯電話だから、200フォリント入れて」
「200フォリント? …コインは100フォリント分しかない」
「100フォリントだと、かなり短い間しか話せない。200は必要だよ」
「…ない」
「よし、じゃあボクが両替してあげよう。その200フォリント札を100フォリント硬貨2枚に替えてあげる」
「さ、さんきゅう」
「じゃあまずコインを入れて。そう。次に、ゼロ、シックス、トゥー、ゼロ…(と番号をひとつずつ英語で読み上げてくれる…)」
「つ、つながりました」
「あとは相手と話せばいいよ」
「さ、さんきゅー!」
あ、ありがとう、青年!
ルルルルー
ガチャ
(今度はちゃんと相手がおばちゃんかどうか確かめないと)
「アーユー、ガブリエラ(=おばちゃんの名前)?」
「イエース」
「This is Yugo」
「イエース」
「早く来てってば」
「イエース」
「もう7時20分だってば!」
「イエース」
「約束の時間は6時40分でしょう?」
「ノー」
「ノーじゃないよ! 6時40分だよ!」
「ノー、7時40分です」
「ええええええ! 違うよ! 6時40分だよ!」
「いいえ、7時40分です」
「も、もう、何でもいいから、とにかく早く来て」
「あと15分後に行くわ」
「じゅ、15分後? ハリーアップ! ハリーアップ」
「バーイ」
ガチャン
もういちど計算してみる。
フライトは10時、と言っていたけど、正確には10時40分。
国際線は2時間前チェックインだから、8時40分。
ここから空港まで1時間として、7時40分。
ん? 7時40分?
ここを出発するの、7時40分じゃん!
6時40分は、アタシの勘違いじゃん!
ほっと胸をなでおろしたところへ、ガブリエラおばちゃんが笑いながら登場。
「なにか勘違いしてたみたいね、この子は。おーほっほっほほ」
「アイムベーリーソーリー。ビコーズ、アイムベーリーナーバス…」
「いいのよいいのよ、ノープロブレム。ほほほほほー。それよりブダペストは楽しかった?」
「楽しかったし、おいしかったし、部屋もカンファタブルでした」
「それは良かったわ」
すると、ガブリエラおばちゃんの携帯電話にタクシー到着の知らせ。
「ほら、タクシーが来たわ。これでお別れね。気をつけて」
そんなわけで、メーターも何もない白タクらしき車に乗り込んで、空港へ。
「一応1時間みておく」と言っていたものの、実際は30分で到着。
ちなみに料金は20ユーロ、もしくは5,000フォリント(3,300円くらい)という約束。
ユーロなんて持ってないのでフォリントで払いました。
以上、ただアタシが約束の時間を1時間勘違いしていて、いろんな人に迷惑をかけたけど、いざとなったら意外といろんな英単語が自分の口から飛び出してきて、自分でもびっくり、という事件でした。
笑い話になって良かったけど、実際その時は泣きそうでした…。
そんな感じでバタバタだったので、ガブリエラおばちゃんの写真(と公衆電話の写真)を撮るのを忘れてしまったのが、唯一の心残り。
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