2008-03-13 (木)
渋滞と密度と相転移
asahi.comに掲載された、渋滞に関する以下の記事。
→asahi.com:渋滞、車多いと自然発生 阪大などのチームが実証 - 関西
渋滞は道路を走る車の数が一定密度を超えると起きることが、自動車を走らせる実験からわかった。トンネルや坂といったボトルネックなどの特別な外因がなくても自然発生するという。
いまひとつ、何が書いてあるのかよく分からなかったのだけど、スラッシュドットで取り上げられて(スラッシュドット・ジャパン | 渋滞の数理モデルを実証)、そこの以下のコメントでやっとなんとなく掴めた。
→渋滞の数理モデルを実証: #1311852
すごく乱暴にまとめると「渋滞と非渋滞は、程度問題ではなく別の状態」「渋滞は密度によって発生する(ボトルネックによらない)」「臨界密度になると渋滞に相転移する」あたりがポイントです。
- 渋滞と非渋滞は、程度問題ではなく別の状態
- 渋滞は密度によって発生する(ボトルネックによらない)
- 臨界密度になると渋滞に相転移する
最初分からなかったのは、asahi.com記事の以下の部分。
菊池教授は「車の密度が一定値を超えると、ちょっとした速度変化が後の車に次々に伝搬し、渋滞を起こす。ある温度以下になると水が一斉に氷に変わる現象と同じだ」と説明している。
この「水が一斉に氷に変わる現象」ってのを知らなかったので。
これに関しては、スラッシュドットの以下のコメントが分かりやすかった。
→渋滞の数理モデルを実証: #1311860
純粋な水を注意深く冷却していくと、0度よりも低くなっても氷にならないという現象が起こります(過冷却)。しかし、このような状態では、何かのきっかけがあれば一気に全体が氷に変化します。
水を氷にしたくなければ、氷になるきっかけを取り除くことを考えるより、温度を高くすることの方が効果的です。
これと同じことが渋滞にもいえるのですが、今までの渋滞対策は「渋滞が起こるきっかけ」を取り除くことばかりに注力し、本質的な「通行する車の密度を下げる」部分に注目されることはほとんどありませんでした。
つまり、渋滞と非渋滞は、程度問題ではなく、水と氷くらい違う状態。
そして、その状態は、ある臨界密度になると、一気に変わる、と。
その場合、「前の車がブレーキを…」とか「トンネルが…」「料金所が…」とか、そういった要因とは関係なく起こるべくして起こる、と。
いやどうなんだろ、関係はあるのかも知れないけど、どうであれ、臨界密度に達していれば、早かれ遅かれ、必ず起こる、ってことかな。
asahi.comにも名前の挙がっている菊池教授のブログの関連エントリは以下。
→渋滞の論文が出ました(または相転移現象としての交通渋滞)
→研究組織
→数と密度 (渋滞論文の話の続き)
→さらに渋滞の続き
論文へのリンクもあるのだけど、それを読めばちゃんとボトルネックとの関係も書いてあるみたい。
ちなみに、水の例を出してしまった関係で、bogusnewsに以下のような記事が作られていました。
ふははは。
→【まん延する渋滞の原因】大阪大が究明─「ありがとう」不足 : bogusnews
(関連: 水からの伝言 - Wikipedia)
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