こらない

2006-08-23 (水)

2006-08-16/2006-08-20: 少年王者舘『I KILL—イキル』

ikill.jpg少年王者舘『I KILL—イキル』@下北沢ザ・スズナリにイッテキマシタ(2006-08-16)、イッテキマシタ(2006-08-20)。

1ヶ月前に名古屋の公開リハーサル2日目(45分バージョン)を見た時に、「これまで以上にバラバラにされてる」と思った。
今回、東京公演(1時間50分バージョン)を見ても、その印象は変わらず。

元々王者舘の芝居は、バラバラに分解して、再構築している、なんて言われることが多い。
仮にそうだとして、今回その分解する際の単位が、1桁も2桁も違う(これまでより細かい)印象。
というより、分解/解体のさせ方が機械的で、その手法からさえも意味や意図を排除してしまっているような感じがした(これまでは分解後のパーツが「パーツ」として捉えられる程度のサイズや形を持っていた、と思う)。

意味や意図の消失はあちこちで感じられて、上の文章で言うところの「再構築」の部分でもそう思った。
解剖台の上のミシンとコウモリ傘、じゃないけど、はっきりと意図しないまでも、そういう出会いに期待をしているようなところがあったと思うし、あるいは明らかに別次元のものを出会わせての演出、というのもあった、と思う。
けど、今回、そういう言葉や意味の上での「意図」とか「演出」が排除されているような印象。
どこにもつながらない全く異質なタモさん。

そうして再構築された作品を、今度は見た側(の中の深読み好きな物好きなファン)が、ひとつひとつていねいに剥がしていくと、パッと見ただけでは分からなかった(けど不思議と感じてはいた)あれこれが浮かび上がってきたりした。
けど、今回、それもない。

ちょっと違うな。
今、剥がしていく、と書いたけど、それはつまり表面があったり、奥があったりというように重層的に捉えていた、ということ。
けど今回は、すべてをひとつの平面上に均等に均質に散りばめられているような印象だった。
そしてその平面をぺろーんとめくっても、そこには何もない。

何もない、のだけど、実際に舞台の上で起こっていたことは、逆にこれまでにないくらい過剰なもので、ものすごい疾走感。
なのに見終わった感想としては、空っぽで真っ白。

真っ白といえば舞台セットもそうで、リアルで精巧と言われる王者舘の舞台セットが、今回は真っ白。

ちょっと「何もない」って書きすぎた。

うれしかったのは、とにかく新しい作品が見れたということ。
「新作」ってことじゃなくて、「新作という名の古い作品」ではなく、またちゃんと新しい作品が出現していた、ということ。
「新作という名の古い作品」というのは、過去のパクリという意味じゃなくて。
うわあ、書き方が難しいなあ。
つまり「前のと一緒だったねー」になってなかった、ということ。
それが、アタシにとってどんなにかうれしかったか。

思い出してみる。

そびえ立つ白い門。
マバタキに例えられる一瞬の暗転(比喩にあらず)によって門の前に現れる数々の人物。
包丁ですか? ナイフですか?
ホトケさんの一郎くん。
消える音、消える歌声、消える鈴の音。
門の扉が開き(と同時に舞台奥に移動しながら)、ムコウ側からコチラ側へやってくる。
真白な世界に刹那に描かれる色、路地、花火、真っ黒な空、青い空、アタシはいない。
縦スクロール、回転(最終日)、上下分割、あるいは斜めに引き裂かれる世界(比喩でなく)。
高速で穴に吸い込まれる愚連な人たち(比喩でなく)。
穴かと思えば、巨大な正露丸。
夏休みでこっちに冬休みで帰ってきた。
なふやすみ。
山川、ヨミ。
じゃまするぜー、じゃましたなー。
コーマン印の醤油、レモン味のママレモン。
あ、ヒゲ生えた。
ホコケ虫、見んかった?
ヘモムスビ、見んかった?
絶賛の嵐が巻き起こる!
ひょっとこの天ぷらちょうだい。
にっぎやかだなあ。
ちゃぶ台ガールズ、やいのやいのー、ぎゅうぎゅうー。
大層無意味な腹筋腕立てコサックダンス。
よっこいしょういちっと。
上には空はなく照明が、きっかけ忘れんなよな、出トチる役者、倒れる照明、さっきのシーンは裏で聞いていた、台本にそう書いてある、滑舌がよくってよござんした、「ともすればメタ演劇とも捉えられかねん」、開演に先立ちまして音の鳴るものの電源をキルよう…、ただいまより65年間のキュウケイ…、これを持ちまして世界はすべて終了いたしました。

そして、男女に分かれてのノート。
ア・イ・タ・イ。

アタシの最近の最大の涙腺ポイントは、役者さんが「本日はどうもありがとうございました」というところ。
その台詞が境界に位置してるからなのかどうか分かんないけど、そこんとこでこらえてたもんが決壊しちゃう。
で今回、その台詞がかなり早いところ出てきちゃって、もうたいへんでした。

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