KUDAN Project『くだんの件』
作・演出:天野天街
出演:小熊ヒデジ&寺十吾
※作業中
◆物語
どこでもない時、どこでもないところ、どこでもない夏の或る日……記憶の奥に取り残された荒廃した店頭。ホコリの積もったカウンターの奥に座る一人の男(ヒトシ)のもとに、一人の男(タロウ)が訪ねてくる。タロウは昔、集団疎開をしていた頃、このあたりの二階の片隅で半人半牛の怪物「クダン」を飼っており、その「クダン」を探しに来たという。謎めいた二人の過去をめぐり会話は捩れ、過去と現在を行きつ戻りつしながら世界は迷走し、蝉時雨を背景に分裂と増殖を繰り返す。《夏》のイメージを明滅させながら、まるで極彩色の光の中をジェットコースターで走り抜けるようなスピードで物語は展開し、夢か現(うつつ)かわからぬ世界の先に待つオシマイへと向かいます。
◆「件(くだん)」のこと
『件』と書いて『くだん』と読む。『件の如し』などと言う時の、あの『くだん』である。『くだん』とは元来『くだり』の訛ったものであるが、中国地方の山間部に伝わる話では、クダンとは身体が牛、頭が人で、牛から産まれる。出生の直後に戦争や飢餓等に関する予言を残して、間もなく死ぬ。そしてその予言は的中すると信じられている。太平洋戦争末期にもクダンが現れ、戦争の終結が近いことを告げたと言う。クダンに取材した文学作品としては、内田百間『件』、小松左京『くだんのはは』がある。
◆作品について
『くだんの件』は天野天街が初の二人芝居として書き下ろした、天野作品としては謎解き色の強い異色作です。本作品は1995年、KUDAN Projectの前身である《キコリの会》によって東京・名古屋で初演されました。1998年には『劇終/OSHIMAI〜くだんの件』と改題し、台北、香港で初の海外公演を実施、その後も北京、広州、釜山などで上演され、アジア演劇界に大きな衝撃を与えた傑作二人芝居です。多義性に富んだ劇世界がシンプルながらも骨太な形で現れた本作品は、1999年に第44回岸田戯曲賞最終選考にもノミネートされるなど、その完成度を高く評価されました。
イメージを果てしなく増殖させ、その果てにさらに大きなイメージを結実させる天野独自の重層的作劇術が遺憾なく発揮された本作品は、KUDAN Projectの原点でもあり、天野の演劇手法の集約ともいえます。
また、本作品で寺十吾(じつなし・さとる)が日本インターネット大賞最優秀男優賞を、天野天街が同最優秀個人賞を受賞しています。
■関連サイト(観劇レビューなど/ネタバレ注意!)
◎1995年(初演)
●えんげきのぺーじ 初演時、にしかどさん、まねきねこさんによるレビュー。
◎1998年
●えんげきのぺーじ えんぺ大賞1998。寺十吾が最優秀男優賞を受賞。作品(くだんの件)は次点でした。他にも天野天街が最優秀個人賞、少年王者舘が最優秀団体賞を受賞しています。
●ンチャ通信 POKOさんのホームページ。
●演劇◎定点カメラ まねきねこさんの演劇レポート。
●白水社 第44回岸田戯曲賞選評。天野天街が『くだんの件』で最終候補にノミネートされました。
◎1999年
●関西観劇ネットワーク 大阪・扇町ミュージアムスクウェア公演。
◎2005年
●Wonderland 小劇場のいまを伝える劇評サイト。葛西季奈さんのレビュー。
●Wonderland 同じく、青木理恵さんのレビュー。
●Tea time diary きのこさんのサイト。
●『古い日記』(和田アキ子が好き) 2月2日の日記に。
●しのぶの演劇レビュー 高野しのぶさんのレビュー。
●未熟者 2月1日に。
●踊る芝居好きのダメ人間日記 1月31日に。
●妖妖妖さんのHP 1月30日の日記に。
●mckeeの手帳 1月31日の日記に。
●Theatre Cafe 小雪さんのレビュー。
●おかぶろぐ
●猫は数に入れてません 1月30日に。
●☆はなはな☆ 1月29日に。
●日に一冊週に一本月に一回 2月2日に。
●なつやすみ ノリスケさんの日記。
●戯言色々 2月1日#1に。
●Badlands 映画・音楽・演劇などのレビューサイト。
■書籍情報
『くだんの件 天野天街作品集』(北冬書房)
舞台脚本「くだんの件」「絶対/相対 キットアイタイ」収録。映画「トワイライツ」絵コンテ、天野天街インタビュー、イラスト集。A判並製・本体2,000円。→●北冬書房HP
■『くだんの件』公演履歴
年・月 | 都市 | 会場 | 備考 |
---|---|---|---|
1995年7月 | 東京公演 | タイニイ・アリス | 「キコリの会」公演 |
1995年7月 | 名古屋公演 | 七ッ寺共同スタジオ | 「キコリの会」公演 |
1998年8月 | 台北公演 | 皇冠藝文中心 | アジア小劇場ネットワーク公演 |
1998年9月 | 香港公演 | 香港藝術中心 | アジア小劇場ネットワーク公演 |
1998年9月 | 名古屋公演 | 七ッ寺共同スタジオ | |
1998年9月 | 東京公演 | タイニイ・アリス | |
1999年6月 | 高校生の演劇教室(名古屋) | アートピア・ホール | 主催/名古屋市教育委員会、他 |
1999年10月 | 大阪公演 | 扇町ミュージアムスクエア | |
1999年10月 | 名古屋公演 | 七ッ寺共同スタジオ | |
1999年10月 | 北京公演 | 北京青年藝術劇院 | アジア小劇場ネットワーク公演 |
2000年11月 | 名古屋公演 | 七ッ寺共同スタジオ | |
2000年11月 | 広州公演 | 広東実験現代舞踏団小劇場 | アジア小劇場ネットワーク公演 |
2001年10月 | 釜山公演 | 慶星大學校小劇場 | 釜山ASIA演劇祭 |
2001年11月 | 名古屋公演 | 七ッ寺共同スタジオ | |
2005年1月 | 横浜公演 | 横浜相鉄本多劇場 | 共催:横浜AC、横浜市 |